リレー小説

物書きさんのまいこ様と気の向くまま、リレーで書いていきます。 性描写あり。五男右でCP未定、三角関係ありの為ご注意を。なんでも許せる方のみどうぞ。 ※書き込みは、まいこ様とはちに限らせていただきます




14件の内、新着の記事から10件ずつ表示します。


[15] (無題)

投稿者: まいこ 投稿日:2017年 2月16日(木)01時05分40秒   通報    編集済

【side 十四松】

 おれはなんかよくわかんないうちに、おそ松兄さんを押し倒して、兄さんのちんこを握ってた。
 ひえっ、なにされんの、俺?! なんておそ松兄さんが、ぼくの下で声を出す。

 じゅーしまつ、魔法をかけるよ、そしたら俺たち、元通りだ、なんてさ。
 あんなことば、久しぶりに聞いた。

 じゅうしまつ、魔法をかけるよ。

 その記憶は、懐かしくて、暖かくて、すごく、かっこよくて。
 おれのヒーロー。
 おれはちょっとなんかこう、……ぐっとキたわけで。



「……おそ松兄さん」
「…ど、どした」
「ぼく……、おれ……」


 うまく声が出ない。
 おれでも分かる。この感情、この感情は。


「おれ、……なんか、ヘン」

 おれのてのひらのなかのおそ松兄さんの兄さんは、さっきとはちがって、すっかり萎えちゃって。
 おれはそれがまた寂しいし、悲しくて。
 さっきさ、ちょっとぺろってしたのに、でも、うんともすんとも言わなくて。
 ものすごく、……ものすごく、悲しい。そう、悲しい。


「お前はそんなことしなくていい、なんて、おそ松兄さんはさっき言ってたし、さっき、魔法もかけてくれたんだけど」

 やっとの思いで、声を出す。


 おれは、おれはね、あんまちゃんとこういうこと話すの、得意じゃなくて。
 兄さんみたいに、あんまりしゃべるのうまくないんだけど。
 おれを見て、兄さんはふっと表情を変える。真剣な目。一生懸命、おれの話を聞いてくれようとしてる。ちんこ丸出しで。そんなところも、ものすごくかっこいい。


 ふにふにと、おそ松兄さんの兄さんのタマタマを、ころころもてあそぶ。
 やわやわ、やらかいそこは、なんか癖になる感じで。
 でもさっきまでの熱は感じられなくて、なんだかすごく、悲しくなってきた。


「十四松、お前……」


 兄さんがおれに手のひらをのばす。


「やっぱ泣いてんの……?」
「あれっ、」


 おれ、いつの間にか、泣いてた。
 おそ松兄さんは上に乗っているおれを、ゆっくりとどかして、よいしょ、なんて言いながら上半身を起こす。


「とりあえず、十四松、俺の足から降りよう? ちょっと足痺れた」
「あい、」

 ごめんなさい、なんて言って兄さんの体から降りて、となりに座る。
 そして、兄さんは、下げてたズボンをぐいと上げて、ちんこをしまう。
 そんでにかっと笑って、俺をちょっと見つめて、おれを抱き寄せた。

「なあ、十四松、俺、おまえの顔見たい」


 隠れてないで、でておいで~なんておどけながら、おそ松兄さんはおれのつなぎのファスナーに手をかける。
 どんな顔していいのか分からなくて、隠していた顔。
 ファスナーを下ろされて、ぜんぶ、ぜんぶ出てきちゃった。
 至近距離で顔を見られて、涙を拭われて、おそ松兄さんは眉毛を下げて、笑う。

(あ、その顔)


「お前、なんて顔してんの……」


(その顔、すき……)



 あの日あのとき、逃げちゃったのは。
 嫌なんじゃなくて、昔から心の中に巣食っていた感情を、無視できなくなるのが怖くて。

 触れたくなかっただけ。
 でも、もう触れてしまった。



 ああ、わかった。なんでこんな気持ちなのか。
 ああ、わかった。なんでこんなに心臓がぎゅっとなるのか。

 おれ、たぶん、きっと、ずっと、やっぱり。



「おそ松にいさんのことが、すき……」

 気が付いたら、言葉が口からこぼれおちたんだ。

 触れたくなかっただけ。
 でも、もう触れてしまった。

「えっ、」

 兄さんは、目を見開く。
 そうだよね、びっくりするよね。
 おれでもわかる。だってちょっと突然過ぎるよね。でもね。

「おそ松兄さん、おれ、おそ松兄さんが好き。大好き」

 たぶん、魔法が掛かってる。
 小さな時から、ずっと。

 十四松、魔法をかけるよ。



「おれ、……おそ松兄さんと、もっと、えっちなこと、したい」





[14] (無題)

投稿者: まいこ 投稿日:2017年 2月16日(木)01時02分21秒   通報    編集済

【side おそ松】

「じゅうしまつ…っ」
 なんて情けない声なんだ。
 俺は俺なりに、こう、なんていうか、十四松のことを考えて考えてあれ? 何考えてたんだっけ?

 俺のモノを咥えて、けなげに舌を、頭を、口を、動かしている十四松。
 伏せた瞼を縁取るまつ毛は震えて。
 ああ、やっぱり、まつ毛長いなって、そんなことを思いながら。
 あまりにも突然の十四松の行動に、びっくりしつつも、俺の心はどっか冷静で。
 俺は目の前の十四松の頭をそうっと撫でる。

「十四松、いいよ。いい。お前、そんなことしなくていいんだよ」
「…ふ、」

 十四松はちら、と俺を上目遣いでみつめると、一旦口を離して、舌だけでべろり、と俺のムスコを下から舐め上げる。
 ふわ、それはちょっと興奮した。
 なんつってね。今はそういうことじゃないんだよ。

「……おそ松兄さん、」

 十四松が、俺を見つめたまま、口を開く。やつの口が動くたびに、吐息がムスコにかかってちょっとキモチいい。

「きもち、よくなかった?」
「へ?」
「おれじゃ、やっぱ、だめ?」
「は?」
「女の子より、おれのこと、かわいいんじゃなかったの」

 そう言って、下を向いて、俺のムスコにがぶりと齧りつく。

「ぎゃーーー!!!」
「へへへっ、なんてね、兄さん、ごめんね!!」
「お、お、おまっ、なんでデリケートな兄ちゃんのムスコを!」

 ふへっ、って笑う十四松が、なんかすげーかわいくて。
 俺はなんかちょっとときめいてしまった。

「……十四松」
「あい」
「お前、かわいい」
「……そ」

 そっすか…なんて消え入りそうな声で。首をすくめて、着ていたツナギの首元に、顔を半分埋める。
 こいつのツナギ、なんかよくわかんねーけど、首のところがすげー長いんだよ。すぐ顔が隠れるようになってる。

「……おそ松兄さん、おれね」
 顔を隠しながら、十四松がぽつり、つぶやく。
「おれ、兄さんのムスコ、かわいがるのやじゃなかったよ」

 え?

「あの、やじゃなくて、なんか、恥かしくて。その。どうしていいか分からなくて、逃げちゃったんだ」
「へ? そぉなの?」
「ウン」


 顔を限界まで隠してるので、十四松の表情がわからない。
 テレビからは、女優の嬌声が絶えず流れて行く。
 すっかり萎えた俺のムスコ。
 すっかり萎えた俺のパッション。

 でもそれとは、別に、俺の心の中心は、何だかぎゅっと、こう、十四松に、掴まれてるような………。

 なんだこれ。
 なななななんだこれ。

 頬が熱くなるのを感じる。俺、もしかして、もしかしなくても今、顔真っ赤なんじゃないだろーか。


「おれね、おれ。ひとりでずっと考えてて………あれからずっと」

 ひとりで? っていうか、お前、一松と一緒に居たじゃん? なんて、心の中でツッコミを入れる。

 あー、なんていうか、俺、意外と、意外とじゃねーや、すっごく気にしてたのね。


「ずっと?」


 とりあえず、心の中のツッコミは、心の中にしまっとく。
 努めてなんでもないふりをして(顔は真っ赤だろーけど)、優しく言葉の先を促してやる。
すると、十四松は、隠して居た顔を、ツナギの中からピョコン、と、目だけ出して、俺を無言でじっと見つめてくる。
 こぼれ落ちそうな目は、どこか、ゆらゆらと揺れているようで。


(泣いてんの?)


 「おれ、………ぼく、ぼくも、おそ松兄さんとうまく話せなくて、すごく………」
 「十四松、」

 いつものこいつからは想像できないような声と、表情、そして涙目。
 俺は思わず、十四松の言葉を遮る。
 すると、十四松は、あい!と条件反射なのか、すごく大きな声を出して、返事をする。

「十四松、魔法をかけるよ」
「………!」
「目を閉じて。………そう、いい子」
「………おそまつ、にいさん」

 目を閉じて、なんだか弱弱しいような、かすれたような声を出す十四松。なんだ、こいつも、こいつもさ、あのときから変わってないや。

 泣き虫の、十四松。
 かわいいかわいい、あのときのまま。


「魔法をかけるよ、十四松。これから俺が、さん、にぃ、いちって言うよ。そしたらお前は笑顔になる。楽しくなる。俺たちは元どおりだ」
「………兄さん」



 さぁ、じゅーしまつ、まほうをかけるよ

 さん

 にー

 いち




 次の瞬間。



 俺は。

(あれえっ?!)



十四松に、押し倒されて居た。

しかも、俺、ちんこだしっぱなしで。



「……ねえ、兄さん」
「わ、わわ」

 そっと十四松のてのひらが俺のちんこに触れた。奴の体温に包まれて、おれのちんこはびくんと震える。

「ど、どしたの……」

 俺はちょっと混乱しながら、上に乗っかって来た十四松を、下から見上げる。
 十四松は、何を考えているのか分からない無表情で、俺を見降ろしていた。

「あの~……、十四松さん?」
「あい」
「その、お兄ちゃん、そろそろちんこ、しまいたいんだけど」
「そうだね」


 兄さん、寒い?なんて聞かれて、ぶんぶんと頷く。
 さっきまでのなんだかしんみりとしたような雰囲気はどこへやら。
 十四松はただ、無表情だ。
 俺はなんだか異様な雰囲気に圧倒される。

 やだ怖い。何されるの。




[13] (無題)

投稿者: はち 投稿日:2017年 1月10日(火)10時06分28秒   通報    編集済

〈 side おそ松 〉

競馬新聞を読みながら、予想を立てる。
前評判なら、確実に2番。
単勝回収率の高さなら、1番。
…で、なんか引かれるのが、3番。

うーん。
3、2、1、の三連単でいくか。
男ならやっぱり三連単だよねー。

がばりと、競馬新聞から頭を起こす。
だめだ。いくら別のことを考えようとしても、一松から言われたことがすぐに脳内を埋め尽くしてしまう。

あー。くそ。俺としたことが、何ウジウジ気にしてんだろめんどくせぇ。


さん

にー

いち。


……モヤモヤしたものを追い出したくて、唱えるように頭に浮かべた言葉に、ふと、囚われる。

はて。どっかで、聞いたような。

耳によく、馴染んでいる…というより、これをよく言っていた気がする。


『さぁ、十四松。魔法をかけるよ、さん、にー、いち!』


あー。

「はは、……」

ああ。そうだ。
……思い出して、おもわず自嘲するような笑い声が漏れた。

ぴーぴーよく泣く、自分と同じ顔の弟。
いっつも泣かされては、相棒の背に隠れて。十四松の相棒だった一松は大人しかったけど、十四松のことになるとテコでも動かないところが、昔からあった。

だから俺は、一松の背に隠れる十四松に、まるで見せつけるように、とびっきり楽しそうに、大きな声で遊び回った。そのうち、ぐずぐずの涙目が羨望のまなざしに変わるのを知ってたから。

ぼくも仲間に入れてって、隠れみのからひょっこり出てきて、泣かされたことなんかすぐ忘れて後ろを付いてくる。ほらね。俺、あいつが笑う方法、知ってんだよ。

ふにゃりとはにかむように笑う、その顔が見たくて。どんなに泣かされても、意地悪しても、純粋に俺を慕う十四松が可愛くて。
泣かしてもへーき、俺はこいつを笑わせることができるから。……本当にそんなふうに思っていたような気がする。

「はは…、なんだ俺、全然変わってねぇのな……」

競馬新聞を投げ出して、赤鉛筆も放り投げて、仰向けになって寝転がる。
あの頃の十四松が、俺を覗き込んで、なんだいおそ松、元気がないねぇって笑いかけた気がした。

・・・

〈 side 十四松 〉

命の恩人?らしいお友達のカップルからお誘いがあったとかで、「今日はちょっと出掛けてくる」とモジモジいそいそする一松兄さんを駅まで送って、帰り道。

いつものパーカーでも、首元がだるだるになったトレーナーでもない、セーターとコートをきっちりと着込んだ兄さんは、とってもカッコよかった。

おれと離れることを心配してくれてるみたいで、「やっぱり断ろうか…」って何度も言う一松兄さんの背中を押して送り出し、ひとりで晴れた空の下を歩く。
優しくて、すぐ手を差し伸べてくれる一松兄さんに頼ってばかりじゃなくて、ちゃんと自分の言葉で話せって、言われてる気がした。

いつもは力いっぱい開ける玄関の引き戸を、ゆっくりと開けて。ごくんと唾をのむ。

たしか今は、おそ松兄さんしか、家にいないはずだ。

「た、ただい、」

おそるおそる出した声は、自分でもびっくりするくらい小さくて。すぐに居間のテレビの音にかき消された。

『あっ、……あ、ん』

「う……っ、っはぁっ、」

……あ。これ。

おれでも分かる。
鼻にかかった女の人の甘い声に、おそ松兄さんの荒い息遣い。
シコ松の看板も立てないで。おそ松兄さんが、吐き出している。

……こんなの、よくあること。
おれ6人兄弟だし、こんなアクシデントなんて日常茶飯事。

でも。

でも。

襖の隙間から見える、赤いパーカー。
真っ昼間なのに、カーテンを締め切った薄暗い部屋の中でうごめくその背中は、どこか寂しげで。


ー うん。可愛いよおまえ。……そこらのオンナよりよっぽど


おそ松兄さんは、女の人より、おれのこと可愛いって言った。
それなのに何で?って、身勝手な考えが降って湧く。おれでも分かる、おれはそんなこと思う立場じゃなければ資格もない。
それでもなんだろう、おそ松兄さんを女優さんに取られたみたいで、おれはショックを受けていた。

「じゅ、しま、つぅ……」

絞り出すように、自分の名前を呼ばれ、ハッと顔を上げる。
見れば、赤い背中を丸めて、びくんと肩をゆらし、おそ松兄さんの動きが止まった。

「え……、」

おれの、名前。
そんなせつないような声で。

スーッと襖を開けて、引きつけるられるように、部屋の中へ入り込む。
物音に弾かれるように、おそ松兄さんが振り向く。

「え、ん、うわ、はぁ?、じゅっ十四松!?」

「うん」

「い、いやいや待て待て、おまえ、いつから」

「十四松だよ」

びっくりして身構えるおそ松兄さんの前にしゃがみ込み、慌ててくるりと向こうをむいてしまったその背中に、手を伸ばす。

指先で、赤いパーカーを掴むと、そむけられた背中に、そっとほっぺたをくっつけた。

「……」

帰り道、いっぱい、考えてたのに。少しも言葉になって出てきてくれない。ぐるぐると忙しなく回る思考は頼りなくて。おれはおそ松兄さんのお腹に回した手にぎゅっと力を込める。

「十四松、」

そう言って、おれの手を上から握って、ぐいっと手を剥がされる。離れてっていう、やんわりとした拒絶。
ああ。どうしよう。身体がちぎらそうだ。

「……」

と、思ったら。くるりと振り向き、おれの手を掴んだまま、ぐいーっと引っ張られて。
バランスを崩して、おそ松兄さんの胸にポスンと収まってしまった。

「……ごめんな」

頭の上から降ってきた言葉は、意外な言葉だった。

「おまえがさ、なんでも許してくれるって、どっかで俺、そう思っちゃってて。おまえならどんなことしても嫌わないでいてくれるって。ごめんな」

ふわりと、髪を撫でられる。
その撫で方があまりに優しくて。さらに頭のなかがぐちゃぐちゃになってしまう。

「……もうさ、しないから。だからいつもみたいに戻ろうぜ?俺、おまえに避けられんの、ちょっと耐えらんないわ、はは」

ポンポン、と2回頭に触れて、ぐいっと肩を離される。
正面から見たおそ松兄さんは、寂しそうに笑っていた。

待って。
違う、違うのに。

「おそ松兄さん、!」

おもわず、立ち上がろうと片手をついた兄さんの、パーカーの裾をぐいっと引っ張った。
態勢を崩し、うわ、と尻もちをつくおそ松兄さんの上に重なって、剥き出しのままのおそ松兄さんの股間に、顔を近付ける。

「……え?ちょ、、おい!十四松っ、」

迷いなく、精を出しきったばかりのおそ松兄さんのソレを口にふくめる。むわっとオスっぽいにおいが広がる。こんな時なのに、じく、と体の芯がにおいに反応して、疼いた。

どうしたらいい?
どうすれば伝わるんだろうか。

嫌なんじゃなくて。
昔から心のなかに巣食っていた感情を、無視できなくなるのが怖くて。

触れたくなかった、だけなんだ。



[12] (無題)

投稿者: まいこ 投稿日:2016年10月28日(金)22時59分4秒   通報    編集済

<side 十四松>


 暗い。
 ここは、どこ。
 わからない。

 ぼうっと目の前に映像が浮かぶ。





 ああ、あれは。


 あれは、おれだ。


 これは、夢?




「まぁた泣いてるのじゅうしまつぅ~?」

 小さくうずくまっているおれ。たぶん小学生くらいだろう。
 うえんうえんと泣きじゃくっている。
 その傍にはおそ松兄さん。兄さんは、心から面白そうにおれの顔を覗きこんでいる。

「なぁ、じゅうしまつ、どうした、おにーちゃんに言ってみな」

 小さなおれは何も言わずに、うつむいてうえんうえんと泣いている。
 そんなおれの周りを、踊るようにくるくるまわって、おそ松にいさんが笑ってる。

「さあじゅうしまつ、魔法をかけるよ」



 じゅうしまつ、魔法をかけるよ。




 泣き虫だったぼく、いつもカラ松に泣かされていた。
 泣き虫だったぼく、いつもトド松にあきれられていた。
 泣き虫だったぼく、いつもチョロ松に諭されていた。
 泣き虫だったぼく、いつも一松兄さんに手を引かれていた。


 泣き虫だったぼく、いつも、いつも、おそ松にいさんが、魔法をかけてくれた。



 兄さんはいつも決まってこう言うんだ。
 胸を張って、くるくる回って、踊るように、唄うように、楽しそうに、おれの頭を、ふわり、ふわりと撫でながら。

「さあ、十四松、魔法をかけるよ。これから兄ちゃんが、さん、にい、いち、って言うよ。さん、にい、いちって言ったら、お前は泣きやむ。
そんで笑顔になる。楽しくなる。そしたら、一緒に川へ行こう、野球しよう、きゃっちぼーるだ!」

 眩しいくらいの、輝くような、かっこいい笑顔につられて、おれは必ず泣きやむんだ。そして、おそ松兄さんの笑顔につられるように、おれも笑顔になって立ち上がる。

 魔法のことば。

 さん

 にー

 いち


 立ちあがって、涙を拭いて、笑顔になって、おそ松兄さんに手を引かれて走り出す。
 野球が、キャッチボールが好きになったのも、きっと、たぶん、この頃だ。


 魔法のことば。

 さん

 にー


 いち



 赤が、赤が、目の前に、めいいっぱい広がる。



 おそ松兄さんの色。
 いつからだろう、おれら、それぞれ別々の色を身にまとうようになった。


 おそ松兄さんの赤。
 ヒーローの赤。
 おそ松兄さんは、おれにとって、ヒーローなんだ。
 いつだって、かっこいい。いつだって、憧れだ。


 夢の中のおそ松兄さんは、おれの正面にしゃがみこむ。
 泣いている俺の頭のてっぺんに片手をのせて、わしわしと撫でる。
 そして、唄うように、楽しそうに、こう言った。


『さあ、じゅうしまつ! 魔法をかけるよ! さん、 にい、 いち !』






「……十四松、起きたの」
「……はれっ?」
 目を開けると、目の前に一松にいさんの顔。ぼくの顔を見て、ふっと目が細められる。
「あれっ? ぼく、おれ、さっきまで」
「夢見てたでしょ、なんかむにゃむにゃ言ってた」
 布団の中。おれは一松兄さんにしがみついていた。朝方だろうか、まだ周りは暗い。
「兄さんたばこ臭いでんな、もしかしてさっきまでたばこ吸ってた?」
 くんくん、と一松兄さんの胸元に鼻先をすりつける。
 くくく、という笑い声が耳をくすぐる。安心する暖かさだ。
 なんだかよく分からない夢を見て、目覚めた時に、こうして抱きとめてくれる存在が居る。
 おれでもわかる、それってとっても、しあわせなこと。

 じんわりと心に広がる暖かさに、おれは何となく嬉しくなる。へへへっと笑って、一松兄さんの胸元にさらに密着して、耳を当てて、鼓動を感じる。
 鼓動? うん、心臓の音。

「とく、とく、とく。……あんさん、生きてますな」
「そりゃ、生きてますがな。こんなゴミだけど」
 ふへっ、と口元を歪めて笑う。おれは一松兄さんのこの笑い方が大好きだ。
 おれら6人、ずいぶん大人になってひねくれたもんだけど、本質はずっとかわらない。一松兄さんも、小さなころからずっと、優しいままだ。そして、多分、おそ松兄さんも。
 夢の中のおそ松兄さんを思いだす。おそ松兄さん。そういやおれ、帰って来てから一回もまだしゃべってない。まあそう望んだのはおれなんだけど。一松兄さんまで巻き込んで。

「一松にーさんは、生きてるから、人間だよ」
「……」
 しばらく、沈黙する。何も言わずに一松兄さんはおれの頭をふんわりと撫でる。
 あんな夢を見たからだろうか、目覚めたら一松兄さんがとっても優しかったからだろうか。なんだかすごくおれにしてはめずらしく、泣きたいような気持ちになる。
 なんだかおれ、すごく、すごく、おそ松兄さんに会いたい。そんで話したい。

 おれでも分かる、このままじゃいけない。なんとかおそ松兄さんと話をしなくちゃいけない。


「……ねえ、十四松」
 ふと、一松にいさんがおれにぎゅうと抱きついてきた。
「なぁに、一松兄さん」
「お前の兄弟ランキング、おれは何位なの」
「えっ、トッティが言ってたやつ? んーそうでんなー」
「ここまでさせといて考え込むとか何。ちょっとおれ死にそうなんだけど」
「やー、一松兄さんはそういうんじゃ測れないって言うか」
 ずっと小さなころから傍に居て、手を引いてくれた。
 優しい、優しい、一松兄さん。


「兄弟っていうか、そういうのを超えてるって言うか。おれでもわかる!なんかすげー、もっとすっげー存在だよ!」
「……そ」
 おれの言葉に納得したのか納得してないのか。一松兄さんはほう、と息を吐いた。
 優しい、優しい、一松兄さん。人より臆病で、傷つきやすくて、優しくて、おれのことを一番心配してくれている、一松兄さん。
「兄さん、ありがとう」
「何のこと」
「おれ、たぶん、もう、大丈夫」
「何が」
「何でもいいよ。もう少し寝て、起きたら、おれ、もう、大丈夫だから。もとに、戻るから」
「………」
 ぽつり、つぶやく俺の頭を、一松にいさんがさらにぎゅうと、力を込めて、抱きこむように包んでくれた。



 大丈夫、きっと、もとに戻れる。
 もとのように、ふるまえる。
 おれは、いつもの十四松に戻れる。

(目が覚めたら、おそ松兄さんと話をしなくちゃ……)


 一松兄さんの腕の中。

 心地よい兄さんの暖かさに、おれはまた深い、眠りに落ちた。





[11] (無題)

投稿者: はち 投稿日:2016年10月16日(日)14時03分21秒   通報

気付けば一松の寝巻きの首元をひねり上げていた。
俺が、何も考えてないみたいな言い方しやがって。俺だって、これでも、無い脳みそしぼって考えてた、つもりだ。

「…昔からそうだよね。おそ松兄さんて。十四松のことなら何でも理解できて、先回りしてあいつにイタズラ仕掛けたりしてさ。それで、あいつの事なら何でもわかった気になって、あぐらかいてたでしょ。……おれは違う」

「は、…………」

「おれは、あいつが何考えてるのか、どうしたいのか、全然分かんない。だから、分かろうとしてきた。あいつが言葉にできるまで、おれは傍で待ってる。あんたと違って」

ひねり上げた手から、力が抜けていく。
一松は俺の緩んだ手を、ばっと払った。

「十四松がもういいって言うまで、おれはあいつから離れる気ないから」

「は……、んだよ、カッコつけやがって、クソが」

……秋の夜長。
スズムシが、機嫌良く鳴いている。
ふと、居酒屋であいつが言ってた言葉が脳裏に甦った。

『だからねぇ、こうやって、兄さんのひみつのお店に連れてきてもらえて、おれ嬉しい!!今日はおそ松兄さん一人占め!』

嬉しいこと、楽しいことは、素直に言葉にできんのにね。
人に求めることや抱えている悩みは、全然口に出せない。

なぜ、十四松が一松を頼るのか。
……それがわかった気がした。



[10] (無題)

投稿者: はち 投稿日:2016年10月16日(日)13時14分4秒   通報    編集済




結局、十四松はその日の夕方、四男に連れられて帰ってきた。

「あ、十四松……おかえり。なぁ、あのさ、」

モヤモヤ抱えてんのはしょうに合わないからね、ソッコー声を掛けたんだけど。

「……十四松疲れてるから」

なんか一丁前に威圧感出してくる一松に間に入られて、その隙にパタパタと十四松は2階へ上がってしまった。
一松は強い目でじっと俺を見てから、フイと十四松の後に続く。

……はぁ?

え?何?あれ。
んだよ。謝らせてもくんねーのかよ。だってあれだろ、俺と顔合わせんのが嫌で、あいつは3日も家を出てたんだろ?確かにひっでぇ事したのは俺だ。でもそんくらい嫌だったんなら、文句の一つでもぶつけてこいっての。
そういやそうだ。十四松はいつだって、文句もワガママも何も言ってこない。
俺は。それがすっっっげぇムカつく。

「おそ松兄さん、今はダメ」

拳を握って立ち上がると、くいくいとズボンを引っ張られた。
見れば、末弟がスマホから顔を上げて、諌めるような顔で見てくる。

「あーいう雰囲気の時のふたりは、近寄っても無駄。こっちが虚しくなるだけだよ。……それに今介入したら、今度はふたりで家出しちゃうかもよ?」

淡々と語り掛けるトド松の声で、しゅうっといきり立った気持ちがしぼんでいった。確かに。確かに、トド松が言ってることはよく分かる。あの二人の俗世捨てちゃってます感は、完全に周りをシャットアウトする。

「……ケッ、あーもうやってらんね」

あー。なんっかうまくいかねぇ。
ポケットからタバコを取り出し、縁側に座り込む。
ゆらりとくゆる煙りをぼーっと見つめた。
ザアッと庭を通り抜けた風のせいで、タバコを持つ手がどんどん冷えていく。

まだ秋とはいえ、こんなひんやりする中で、あいつは3日も、何を考えてたんだろうか。




それからしばらく。
一松と十四松は、四六時中べったりと引っ付いていた。もう、四六時中。

「今日も銭湯行かないの?」

「うん。十四松とおれは、家の風呂入るから。いってらっしゃい」

「そ。十四松、湯冷めしないように早く服着させてね」

「……だって、十四松」

「あい!チョロ松兄さんありが盗塁おー、いってらっしゃイニングウィザード!!」

……んだよそれ。十四松のアヒル入りの洗面器、わざと間違えて抱えてたのに。おーワリワリお兄ちゃん間違えちゃったーつってついでに謝る作戦、失敗じゃねーか。

「あれ?一松と十四松は?」

「んー、もう先に食べたって、母さん言ってたー。あ、カラ松兄さんこれあげる」

「ノー!!ダメだぁトドまぁつ!卵のこの白いネジネジには明日のトド松をメイキングするエナジーが」

「チョロ松兄さん、テレビつけてー」

……いやいや、すき焼きはみんなで食うもんだろーが!バカじゃねぇのあいつらマジで。わざと間違えて持ってきた十四松のきいろの箸に視線を落とす。あー、おそ松兄さんそれぼくのーって言われて、そこから自然な流れで謝るはずだったのに。

「あのふたりはー?」

「今日も居間に布団敷いて寝るってさ。十四松が隣に居ないと寒いんだよね、毛布もうちょっとこっち頂戴」

「コールド!オー!コールド!!オレの上から何もかもが消えたぜブラザー……ぶえくしゅっ!!…ブレスミー……」

あーもう。我慢の限界。
あの二人が二人の世界に入り込んでることに慣れきって、疑問すら持たないほか3人にすら、イライラが募る。

「おまえらうっせぇ!!」

「……え、何、急に」

「どうしたおそ松」

乱暴に布団を押し退け、わざと間違えて持ってきた十四松の枕をぽい、と投げ、のしのし部屋を出て行く。なんかグチャグチャ後ろで言ってたけど、んなの知るかバーカ。

しん、と静まり返った廊下を突き進み、二人が仲良く寝ているであろう居間の襖をガラッと勢いよく開ける。

「……………」

「おう、一松」

居間へ入ると、一組だけ敷かれた布団にすっぽり包まって、すやすやと眠る十四松。と、縁側でタバコをふかしてる四男、一松。
足音で誰か降りて来ることは分かっていたんだろう、一松は眉根を寄せ、歓迎しない顔でこちらを睨んでくる。

「……俺にもタバコくれ」

「……にぼし3袋」

「はぁ?……んだよ、わかったよ」

むにゃむにゃ言って、眉を下げ、安心しきった顔で眠る十四松。
その寝顔を見て、胸にじわっとなんかが広がった。

「で、何」

幸せそうな顔で眠る十四松を横切り、縁側に居る一松の横に座り込むと、タバコを1本もらい、煙を肺に落とす。
あー。もうなんか、バカみてぇ。いや、バカなんだけど。

「……あのさぁ。十四松、何か言ってた?」

「……別に」

まぁ、そうだよな。聞いてみたところで、まともに知ってることを俺に話すわけないよな、十四松大好きクラブのこいつが。

「……何したの、十四松に」

と、思ったら。一松がそう聞いてきた。
……へー。こいつにも話してないのか、十四松のやつ。ほんと、秘密主義ですこと。

「フェラ」

「は、!?」

「あいつに舐めてもらった。そんだけ」

「…………なるほどね」

ぶん殴ってこいよと思って、挑発のつもりで言ってみたけど、一松は意外にも、一瞬でその事実を飲み込んでしまった。

「 "なるほどね" なわけね、おまえにとっては」

「うん。……何、もしかして挑発だった?人の本音、そんなに聞きたい?」

「……はーっ、可愛くねーなおまえはホント。はいはいそーだよ、怒らせたら吐くと思ったんだよ、だっておまえら二人、なかなか自分の思ってること口に出さねーんだもんな」

一松という奴は、意外と頭が回る。俺だってわりとそうゆーのは得意な方だ、これでも。

「……口に出さないんじゃなくて、出せないだけだよ。おそ松兄さん達みたいに、器用じゃない。言葉にするのに、すごく時間がかかる。それだけ」

「………ふーん。そ。おまえはあいつのことなら、何でもわかんだな」

「わかんないよ。でも、わかろうとはしてる。……少なくとも、おそ松兄さんよりは」

ぶちりと、自分の中の何かがキレる音がした。

「んだとコラ……!!」



[9] (無題)

投稿者: まいこ 投稿日:2016年10月 9日(日)23時33分6秒   通報    編集済

【side おそ松】

ほーみーたいっ ♪ ほーみーたいぃっ♪

「その歌やめてカラ松」
 ン~?なんていいながらお構いなし。
 俺のかわいい弟その2、松野家次男松野カラ松。俺らの家の、俺らの部屋のソファによりかかり、なにやらギター片手に自作の歌を熱唱中。
 思案中のオレ様の様子に気付くわけもなく、何となくへこんでるオレの様子に察してるわけもなく。ただこいつは、ただ何となくここに居て、やりたいから、曲を奏でる。

「お前その歌なに、新曲?」
 あんま興味ないけど一応、聞いてやる。だって俺おにーちゃんだし。
 そんな俺のスペシャルな優しさと想いやりに気付きもせずに、当然のようにフフンとニヒルにほほ笑みウインクしてくる。
 あーさむっ。さむすぎるぜお前。

「ああ……。オレの熱いパッションのブランニューソング、タイトルは『キスして☆ホールドミータイト』だ。最初から聴きたいなら、心をこめて歌うぜブラ「ふぅん、あっそ」
「えっ」


 あ~、十四松。どこ行ったかなぁ。
 一松に言われて、はたと気づいたあの後に、俺は俺なりにいろいろ奴を探し回ったわけさ。あいつが行きそうなところをかたっぱしからあたってみた。あっちいったりこっちいったり。
 たまにはおーい、なんつって、おっきな声で呼んでみたりね。
 でもねぇ、なんていうか、俺、あいつのこと、実はあんまりよく分かってないかも。
 あいつが何を好きなのか(まぁ~、野球が好きなのは分かってる)、どこがお気に入りなのか、どんな毎日を過ごしているのか。
 俺ね、俺、長男じゃん?
 だから、兄弟みんなのこと、何となく分かった気で居たけど、実はそんなあんまり分かってないもんなんだなーとか。
 そんなことを思って反省してた。


 あの日あの時あの場所で。
 たまたま電話に出たのがあいつで、たまたま俺ムラムラしちゃって、たまたま高校の時のこと思い出したりなんかしちゃったりして、たまたま、あんなことさせちゃったわけだけど。

 もしかしてもしかすると、ひょっとして、ひょっとしなくても、
 あいつ、ほんとは、やだったんだろうなぁとか。

(いやいやでもでも、途中まではたのしそーだったじゃん? そんで、あれだよ、あのごっくんの後は、後はどーだった?)

 はあ、あまり思いだせない。
 だってあのときの十四松、マジ、めっちゃくちゃ、すんげー、超絶、かわいかったしやらしかった。
 なあ、俺だってさぁ、すっげ興奮しちゃったしさぁ、十四松だってなんか、とろんとした瞳しててさぁ、『おそまつにいしゃんおいひい(はぁと)』なんて、いや、言ってないけどさぁ、言ってないけどさぁ。

 でもさぁ、なんで、アイツだったんだろ。
 俺はあいつ以外とだったら、あんなことしただろうか?
 いや、しないよなぁ。なんで、あいつだったんだろう。

 あの高校の頃だって、なんとなく、十四松見てたらムラムラしてさ。別に俺、ホモってわけでもないのにさぁ。しかも男兄弟だよね、頭おかしーね、ウン。松野家長男松野おそ松。奇跡の六つ子、俺は、自分の弟全てを平等に愛してる。長男だからさ。
 (兄弟愛がすんごい方向に迸っちゃったとか?)
 でもさぁ、たぶんさ、あの日あの時あの場所で、一緒に居たのが、目の前に居たのが、もし、もしも、このカラ松だったら……。

「ん~? 何だ? おそ松、やっぱりオレの新曲「うん、ない。ないね。ないないぜったいない」
「えっ」

 なんたって十四松はかわいい。
 すんげーかわいい。あのときも、今も、すんげーかわいい。なにがかわいいって具体的にはよくわかんないけど、すんげーかわいいし、えろい。昔もエロかったし、今もえろい。
 あれ?もしかして俺、なんか、ちょっと、やばい思考入ってきちゃってる?

 なんだか十四松の事を考えていたら、いろんな意味で十四松に会いたくなった。
 なあ、十四松、ごめんなぁ。お前がえろいから悪いんだもんなんて言っても許してもらえるわけないよなぁ。お前のことさ、俺、もっと知らなきゃだめだよなぁ。
 帰ってきたらなんて声をかけよう。なんて顔をしたらいいんだろう。
 とにかく、このままじゃ、だめだよなぁ。俺でも分かるよ、だって俺長男だし。

 あーどこ行ったんだよ十四松。
 会いたいよ。顔見たいよ。声聞きたいよ。
 とりあえずごめん、って言わせてよ。でもお前も、よかったろ? なんて言ったらさすがにクズかもしれない。

 十四松のことを思いだそうとすれば、思いだそうとするほど、おピンクなパッションあふれる、あの瞬間のことばかり頭に浮かんでしまう。
 あいつの潤んだ瞳、半開きの赤い唇、その中にちらりと見える、濡れた赤いベルベットのような舌……、そんで、上目遣いに『おそ松にいしゃん、いっぱい出してぇ(はぁと)』なんちて、なんちって……。

 あああああああーーーーーっ!


 あーなんか、あーなんか、俺、ちょっとやっぱりおかしくなっちゃったかも?!なんか記憶とかねつ造しちゃってる気もしないでもないけど?!

「しかも、うっ、なんか勃っちゃったんだけど……」

 あーあ、もー、まじかよ。やべえよ。末期だよ。
 ティッシュとってカラ松ぅなんて言ったら、なんとも言えないような嫌そうな顔で、カラ松はこっちを見て、ティッシュの箱を投げつけてきた。

 なんてギルトガイなオレ、とかなんとか言ってたけど、俺は気にしないでティッシュに手を伸ばしたのだった。



[8] (無題)

投稿者: はち 投稿日:2016年10月 6日(木)13時10分54秒   通報

《一松side》

日数にすれば3日。
あいつが行きそうな場所を昼夜、当て所もなく歩き回った。
毎週出席してる猫の会議も休んだし、夕飯のコロッケだってあいつの分を兄弟達から死守した。

日常からあいつがポッカリ抜けてしまうと、違和感がひどくて、自分の均衡が崩れる。それに、おれにとってあいつは、全部溜め込んでみんなから見えないところでいっつもひとり、メソメソしていたあの頃から少しも変わってない。
優しくて繊細で、自己犠牲のかたまりみたいな十四松。だから、放っておくなんてできない。今も、昔も。

「あは、みっかっちゃったぁ~」

そう言って、ふにゃっと笑う十四松。
何があったのか気になったけど、答える気はないらしい。まぁ、いいけどね。おまえ、こう見えて結構頑固だもんね。

でも。おれ、めちゃくちゃ心配したんだよ。
おまえが家に帰ってこないってことは、兄弟に干渉されたくない何かを抱えてたってことでしょ。それなら放っておくべきかもしれないけど。でもこのまま放っておいたら、糸の切れた風船みたいに、どっか行っちゃいそうでしょ、おまえって。

くちびるを噛む十四松を見てたら、ここに十四松がちゃんと居ることを確かめたくて。キスをしていた。
まだ、十四松は思考の海から完全には戻ってきていないような気がしたけど、これはおれが安心したいがためにするキス。

ほんとに、ね。

こいつはおれにとって、精神安定剤みたいなもんなんだ。

「帰ろ、十四松」

「……んー」

「何、やなの」

「んー……兄さん、」

「ん?」

「あの、ね。寝るのとお風呂と、ごはんとその他の時、にーさんと一緒に居たい」

「……それ、全部じゃん」

「……ダメっすか?」

「ふひ。いいよ」

たとえね。
外の世界で、こいつに彼女ができたりとか。友達ができたりとか。それで何かあったりしたとしても。
こいつが最終的に頼ってくるのがおれであったらいいなと思う。そうなるように、おれなりに昔から努めてきた。

象のお腹から、十四松をゆっくり立たせ、砂利を払う。
だるんと伸びた袖口をまくって、少し冷えた指先を掴み、ぎゅっと握って、公園を後にした。

成人済みの兄弟が、手を繋いで歩くのは滑稽だろうが、どうでもいい。
十四松が戻ってきたこと。横にいること。おれを頼っている、必要としていること。それらを噛み締めながら、冷たい指先を引いて、夕暮れ時の町を歩いていった。



[7] (無題)

投稿者: まいこ 投稿日:2016年 9月15日(木)23時22分30秒   通報    編集済

《side 十四松》


 まずい。
 ひじょーに、まずい。
 あの時から、おれは、おそ松にーさんの顔が見れない。



 自分でも分かる。あれは、ちょっと、まずいコト。
 高校のとき、あーいうコト、してたこともあったけど。でも。
 あのときのあーいうコトは、若さゆえのアヤマチってやつで。それはなんていうか、まぁ、そんなこともあったっすねーって、笑い飛ばせるコトだ。おれにとっては。
 頭が足りないじゅーしまつ。
 かわいい弟のじゅーしまつ。
 いいよ、それで皆が笑ってられるなら、おれは、それを演じてもいい。



『なぁ、十四松、舐めて』

 あの時。ああ言われた時。
 ぞくっと来たんだ。反射的に、ぞくって。
 おれでも分かる。あれは、ちょっとまずい事。
 だって、おれ、期待した。
 また、おそ松兄さんと、えろいことになるって。
 『かわいい』
 『かわいい、そこらのオンナよりずっと』
 なんて、そんな、そんなこと言われて、おれ、すげー、すげー、嬉しかった。





 高校時代。
 おれは、おそ松にーさんと、えろいことしてた。
 きっかけは分からない。でも、今でもすっげー覚えてる。
 最初は居間で。他の皆はなんかわかんないけど、居なかった。
「あーやりてぇー」
 とか言って、よくわかんないけど、気が付いたら、「舐めてよ」って言われてた。
「なぁ、じゅーしまつぅ、舐めてぇ、」なんて言われて、おれ、なんて返事したっけ。あんまり覚えてないや。
 よく分からないけど、すっげーあの時は、おそ松にーさんも、おれも、頭がおかしくなってたんだと思う。
「なあ、なあ、じゅーしまつぅ、舐めて、舐めて、そう、もっと、もっと」
 吐息まじりに、そう言われて。おれはなんだか変な感じになって。
 頭がくらくらして。
 困ったことに、おれ、あれ、嫌じゃなかった。

 頭では分かってた。あーいうの、やっちゃいけないって。あんまり。


 思いだすのは、おそ松にーさんの、熱に浮かされたような瞳と、ぬらぬらと光って、ひくひくって、してる、いつも風呂で観るのとは違う、でっかくなってるにーさんのちんこと。
 『じゅうしまつぅ』って呼ぶ、にーさんの甘い声。
 じゅーしまつぅ、って呼ばれると、あの声色で呼ばれると、何か、頭がおかしくなる。




「十四松、」


 ふいに呼ばれる。
 その声は、おれが今、思い描いていた兄さんじゃなくて。


「……一松にいさん」
 一つ上の、おれの兄さんだった。

「……やっと見つけた」
「あは、みっかっちゃったぁ~」


 おそ松兄さんの顔が見れなくて、おれはどうしていいか分からなくて、とびきりの、お気に入りの、大好きな公園の滑り台の下。秘密の場所に逃げてしまっていた。
 この場所は、泣き虫だったちっちゃな頃からの、ひみつの場所だ。
 かわいい象の滑り台。お腹のところが空洞になっている。外から見ると、内側が見えない。でも、正面から見ると、中は空洞になっていて、ちいさな頃からのおれのお気に入りの秘密基地だった。

 あれからどのくらいたってたんだろう。ぼうっとしてたから、よくわからない。
 よくおれの思考はどっかへ行く。それは宇宙だったり、よくわからない世界だったり。
 どっか別の世界へいくと、あっという間に数日たっていたりするんだ。

「……今度は、おれ、何日くらい?」
「三日くらい。ひさしぶりだね、小旅行」

 一松兄さんは、おれの目の前にしゃがんで視線を合わせ、じっとおれをみつめてくる。
 ぞうさんの滑り台のお腹の中。
 おれと一松にーさんがふたりで座るには、ちょっとばかしおれら、大きくなりすぎた。

「……心配おかけしマシン軍団」
 いつもの調子で返事をした……つもりだったけど一松兄さんは、おれの頭をぽかっと叩く。

「……何かあったの」
「……何もナイ」
「うそつき」
「うそじゃない」

 じいっとさぐるようにおれを見つめて、一松にいさんはため息をつく。
 いつだってそうだ。一松兄さんは、おれがこんなふうにおかしくなっているとき、何も言わなくてもそっと傍にいてくれる。やさしい、やさしい、一松にいさん。
 何も言えなくて、唇をかむ。そんなおれのくちびるを、一松にいさんは、ぐいぐいと人差し指で押してくる。

「唇切れる、力抜いて」
「うう」
「もう何も聞かないから」
 一松兄さんは、そう言って、おれの頬に、てのひらを添える。一松兄さんは、おれに、とてもやさしい。それは何故かと言ったら。
「ねえ……十四松、……キスしよ」




 おれでも分かる、これはまずい。
 一松にーさんは、おれのことが、大好きすぎるんだ。

 一松にーさんの顔が近付いて来た時、おれは、おそ松兄さんのことを、考えていた。



[6] (無題)

投稿者: まいこ 投稿日:2016年 9月14日(水)21時51分12秒   通報    編集済

《side おそ松》


 まーそんなこんなであれから3日。
 どーも飲みすぎちゃったみたいで? どうやら俺は十四松にちょっとまー結構なんてーか、ひっどいことさせちゃったみたいで。
 ていうかさ、あいつ、すげーかわいすぎるんだよ、なんてかさ。
 そそるっていうの? なんていうの? 女みたいに見えたとかそーいうんじゃなくて、こう、純粋に?
 いやちがうな、不純に? 不埒な? えっちな? 気分が? なんての? なんていうの?


 記憶? あるよあるある、大アリだ。
 あいつのとろんとした瞳、さらさらの髪の毛、伏せられた長いまつ毛にふちどられた上まぶた…。瞳にいっぱい涙ためてさ、そんでおそまつにいしゃんおいひい(はぁと)なんてこう…


「……ちょっと。ちょっと!」


 ぼけーっと家の廊下の真ん中で、突っ立っていたこの俺の背後から、機嫌わるそーな、地を這うような低音が聞こえてくる。なんていうか、ちょっと、嫌な予感を抱きながら、くるりと後ろを振り向く。

「あ、ごめ~ん、俺、じゃまだった? 一松ぅ」
「邪魔って言うか……。ちょっと、話あるんだけど」
 で……出た―! キマシタワー!
 松野一松! 俺のかわいい弟の一人! 十四松のひとつ上の兄弟で、俺から数えて四番目!
 十四松とは、プラスとマイナス、ツーとカー、レフトとライト。ま、よーするに、二人でひとつみたいな、あいつとは一番の仲のいい兄弟だ。
 やっべぇな~、もしかして、十四松にイケナイことさせたのバレたかな~。や、あいつはそんなの言うはずない。だけど、一松と十四松。ベルばらでいったらオスカルとアンドレだ。


 君は~光ぃ~ぼくは~影~♪ 離れぇ~られないぃ~っ、ふたりのき~ずなぁあああ~♪ だ。


 どこかオレの計り知れないところで繋がってる二人。
 たぶん、ばれてる。
 きっと、ばれてる。
 あ、なんかワキ汗でてきた。


 そんな感じで、一人でなんとなくあわてふためくオレを、一松はじろっと見つめてくる。
 そんなつもりはないかもしれないが、こいつ、目が半分しか開いてないんだよね、だからなんとなく、こう、睨まれてる、ような、気が、しなくもなくもないっていうか……。


「……十四松のこと、なんだけど」


 はいドッキーン! 来ましたきました、はい来ました!




「は、はひっ、なんでしょう?」

「……なにその反応。おかしいんだけど。いや、なんていうか、アイツ、最近見ないんだけど。兄さんなんか知らない?」

「あれ?」



 見ない、だって?



「なんか三日前から、……家に、居ない」
「嘘?」

 あれ、なんで? どして?
 風呂とかメシのときとか、そういや……。そういや……。


「居なかったな」
「……でしょ」


 我ら六つ子。松野家むつご。
 布団も一緒なら、飯を食べる時も一緒。風呂も一緒で、誰か一人、一人居ないとか、そんなときは、まあ、多々あるか。
 今までちょっと頭ん中おピンクだったりしたもんだから、なんかじぇんじぇん気付かなかった。だってあいつが居ないとかけっこーよくあるし。気が付いたら速攻『野球!』とか言って出て行ったりするし。
 なんだなんだなんだ、もしかしてもしかして、あいつ。
 この間俺がやらせちゃったことで、もしかして、傷ついてたり……してない、よな?
 心当たりあるといったら大アリだ。
 ああ、俺のおばかさん!
 おそまつ兄さん、独り占めしたかったのー、なんて言われてちょっと頭に血が上っちゃったっていうか、つい今さっきまで、あの時の、三日前の思い出は、それはそれは、もー、おピンクうふんあはんな、ちょっと浮かれた記憶だったのに。
 よく思い出せ、カリスマレジェンド。
 よーく思い出せ、そういや、あいつ、最後になんて言ってた?



『んふ、ごきゅっ……ぅ、にぃさん、ひどい、ひどいよぉ、……!』



 ……あ。
 ひどい、ひどいよぉ、って言われてた。
 わー、俺、さいってー。
 今の今まで勘違いしてた。ひどい、ひどいよぉって言われてたんじゃんね。


「も、もしかして、ものすごく嫌がってた?でもあのあとなんかずっとおピンクオーラでべったりくっついてたりくっついてたりいちゃいちゃしたりしたりしなかったりあれ記憶が……!」


 一人で青くなったり赤くなったり百面相だ。
 あらーなんていうか、わー、やらかしちゃった。

 いくらなんでも、高校のあの時と、今は違う。
 そりゃ、あのときのカワイイ十四松は、今のカワイイ十四松とは違う。

 あのときも合意だったのかどうか、今思えば俺はよく分からない。
 その場のノリ?おピンクなパッション?そんな感じで、やってしまったような気がする…。
 大人になると、何となく分かることもある。ちょっと冷えた頭で思いめぐらせ、十四松のことを考える。

 俺、もしかして、取り返しのつかないことをしてしまったのでは……。

 一松は、そんな時間にして数秒、俺の百面相をひとしきりあのじとっとした目で見つめた後、ひと息ため息をついて、ぼさぼさ頭をぐしゃぐしゃと掻いた。

「……ねえ、あんたさ、何かあいつにしたりしてないよねえ?」
「な……、なにも」

 何も、してないわけないけど、俺は今はとっさにそう答えることしかできなかった。
 ふう、とまたひとつ、ため息をついて、一松はきっと俺をにらむ。


「ならいいけど。オレ、あいつのこと泣かせる奴いたら、いくらおそ松兄さんでも許さないから」


 挑むようにそう言われて、俺の頭のなかは、そりゃもう、真っ白になったのだった


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